『僕と先生』-二葉と隼人の事件簿シリーズの「日常の謎」はやっぱり楽しい!

坂木司さんによる「二葉と隼人の事件簿シリーズ」の第二弾『僕と先生』がやっと文庫化しましたー!

今作の語り手となるのは、十八歳の大学生・伊藤二葉。

彼は推理小説研究会に属していながら、「超」がつくほどの怖がりで、殺人が起こる小説や怪奇小説なんかは一切読めません。

しかし瀬川隼人(美少年)という中学生の家庭教師となったことで、ずぶずぶとミステリの世界へと足を踏み込んでいくことに……。

というわけでこの今作は、中学生の瀬川隼人を探偵役、怖がりな大学生・伊藤二葉をワトスン役とし、身近で起こる不思議な謎を解決していく「日常の謎」シリーズとなります。

『僕と先生』はその二作目。今のところ一作目も二作目も連作短編集です。読みやすさ抜群。あと表紙がすごく可愛い。

 

 

1.『レディバード』

限定チョコレートを買うために行列に並んでいた二葉と隼人は、行列が将棋倒しになってしまう事故に巻き込まれる。

しかしそれはただの事故ではなく、「ある目的」のために仕組まれたものだった。

果たして、犯人の目的とは。。


人間の黒い部分が出たお話。

「……心が貧しいって、こういうことなのかもしれないね」

P.41より

という二葉の心が印象に残ります。

そしてこの話ではとある「怪盗」が登場。わたし、この怪盗結構好きです。

「誰も傷つけず、ただ盗みを楽しむ。これって僕の理想の怪盗なんだよね」

P.61より

と隼人くんも言っていますし。

2.『優しい人』

二葉の先輩である柏原さんから、あるお願いをされる。

それは、バイト先の喫茶店でわざとミスをするから見ていてほしい、というものだった。


一体なぜ先輩はそんなことをするのか?というのがメインの謎かと思ったら、実はメインはそこではなかった。

実に深い、とても社会派な日常の謎でした。これを解決する隼人くん、やっぱりすごいわ。

3.『差別と区別』

推研の先輩であるレムさんが就職活動中にエントリーシートを盗まれたという話。

犯人は誰か?と言うよりは「なぜエントリーシートを盗んだのか?」というホワイダニットがメイン。

これも実に社会派。『差別と区別』というタイトルが実に合った内容ですね。

「君たちは採用条件について差別的だと感じたようだが、実際には、それは差別とは呼ばない。区別と呼ぶんだ」

P.204より

 

その他、バーベキュー中に起きた不可解な事件を描いた『ないだけじゃない』や、マンションの掲示板に謎の写真が貼り付けられるという奇妙な出来事を描いた『秋の肖像』など、計5編の日常の謎が収録されています。

どれもほんわかしていますけど、しっかりミステリしていて楽しめますよん。

あとはやっぱり二葉と隼人のキャラクターが良いってところですね。二人の掛け合いを楽しむキャラ小説としても面白いです。

心に刺さる、日常の謎。

「やっぱ、日常の謎って意地悪だなあ」

「はい?」

「ミステリの話。人が死なないから優しいお話って思われがちだけど、日常の謎って案外シビアで意地悪な話も多いのよ。読んでいる間中、読者の胸にぐさぐさくるようなやつとか、読み終わった後、軽く人間不信になりそうなやつもある」

「そうなんですか」

「うん。いっそ、ゲームタイプの殺人事件の方がマシなんじゃないかなって思うほどにね」

P.133より

133ページのこの会話を読んだ時、超わかるって思いましたもん。

そう。日常の謎って「気軽に読める」「優しい物語」って思われがちですけど(確かにそういうお話もあるけど)、人間の黒い部分を全面に押し出したイヤーな読後感の残るお話も多いんですよね。

私もパッと思いついただけでもいくつかあります。そういう心にグサッとくる日常の謎。殺人が起きるよりはるかに嫌な後味の。

本当にゲーム性のある殺人事件とかの方が気楽に読めちゃったりするんですよねー。どんどん殺人が起きた方が逆に開き直れちゃうっていうか。

 

もちろん今作は「日常の謎」シリーズなので殺人は起きません。でも、ちょっと心に刺さる、苦いお話があったり。この133ページの会話は、まさに二葉と隼人の事件簿シリーズのことを言っているのでしょう。

とは言っても、雰囲気は全体にほのぼのしているので楽しく読むことができるのですけどね。

ミステリガイドとしても!

さて、二葉と隼人の事件簿シリーズの見所は、初心者のためのミステリガイドとしても楽しめちゃうところです。

作中で行われた事件に対して、隼人くんが「この事件だったらこういう小説があるよ」ってな感じで二葉に作品をおすすめしてくれるんですよ。

例えば今作では『怪盗ルビィ・マーチンスン』や『ブラウン神父の童心(創元推理文庫)』、『ポー名作集 (中公文庫)』、『11人いる!』、『怪盗紳士リュパン (創元推理文庫)』、『大誘拐(創元推理文庫)』など数多くの名作が登場します。

すると、何が起こるかって、読んで見たくなっちゃうんですよねー!!

日常の謎としてもミステリガイドとしても楽しめちゃうって最高じゃあないですか(´∀`*)

おわりに

そうそう。『僕と先生』はシリーズの第二弾ですけど、一作目を読んでいなくても楽しめる内容ですよ。

まあできれば一作目から読むのがベストですけど(どっちやねん)。

二作目から先に読んでも、きっと一作目をすぐに読んでみたくなっちゃうでしょう。

ちなみに一作目が『先生と僕』で、二作目が『僕と先生』です。ややこしいです 笑。

ぜひシリーズ三作目も読みたいところなのですが、一体どんなタイトルになるのでしょう?楽しみです( ´∀`)

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anpo39

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。休日は引きこもって本ばっかり読んでいるので、人との交流があまりありません。仲良くしていただけたら嬉しいです(*≧д≦)