『月光ゲーム―Yの悲劇’88』は「学生アリスシリーズ」第1弾にして名作推理小説なのです

『月光ゲーム―Yの悲劇’88』は有栖川有栖(ありすがわありす)さんによる「学生アリスシリーズ」の一作目。またの名を「江神二郎シリーズ」。

京都にある英都大学の「英都大学推理小説研究会(EMC)」の部長・江神二郎(えがみじろう)を探偵役、推理作家を目指す有栖川有栖(ありすがわありす)を補佐役とした人気シリーズです。

もちろん私もめっちゃ大好きで、もう何度読み返したことかわかりません。

本当に、本当におすすめのシリーズなので、今回はその第一弾『月光ゲーム―Yの悲劇’88』をご紹介させていただきます(* >ω<)=3

 

【有栖川有栖】学生アリスシリーズの順番やあらすじ【江神二郎】

2015.09.18

『月光ゲーム―Yの悲劇’88』あらすじ

 

本作は英都大学推理小説研究会のメンバー、江神二郎、望月周平、織田光次郎、有栖川有栖の4名がキャンプ場に向かうところから始まります。

男4人のむさ苦しいキャンプになると思いきや、向かう列車の中で同じキャンプ場に行く他の大学のグループと出会い、一緒にキャンプをすることになりました。

それが雄林大学グループ10名、神南学院短期大学グループ3名。一気に賑やかになりましたね。

キャンプ場に到着し、同じ場所に皆でテントを建て、飯盒炊爨を行い、皆でゲームをする。なんと楽しそうな、青春。

こんなことしてみたいなあ。。。なんて思っていたら、ちょっと不審な出来事が。

神南学院短期大学グループの一人が、置手紙を残して先に帰ったというのです。

しかし女の子一人で下山をするのはなかなか無茶があります。今から追いかければまだ彼女に追いつくかもしれない。

そう皆が思った時でした。

地の底から轟音が突き上げた。不動のはずの大地がまるで三角波をくらったボートのように揺れ動き、僕たちはその場に倒れ込んだ。何が起こったのか判らない。

「ふ、噴火だ!」

誰かが叫ぶ声に山頂を見上げると、朝霧の中に重量感に満ちた黒い噴煙が上がっており、息を吹き返した火の山は凶暴な獣のように天に向かって咆哮した。金切り声の悲鳴があがり、僕は生唾を飲み込む。

P.85より引用

噴火です。大噴火です。

楽しかったキャンプは一瞬にして悲劇へと変貌を遂げました。噴火によって彼らは一時的に下山不可能、つまり深い山の中に取り残されてしまったのです。

しかし、これはまだ本当の悲劇への序章に過ぎません。

キャンプ場で迎えた四日目の朝、ついに殺人事件が発生してしまったのです。

奇妙なダイイングメッセージ

「何でしょう?」

そう問われた江神さんの眉間に深い皺が寄った。

「Yですね」

横から顔を突き出した僕が答えた。

P.117より引用

被害者のそばに残されていたのは「Y」という文字。

そう、ミステリ好きにはたまらないダイイングメッセージの登場です。

しかも、です。

続く第二の殺人でもダイイングメッセージが発見されます。

そこには被害者が失われゆく筋肉の力を集結させて書ききったものと思われる血文字がただ一つ跳ねていた。

「y?」

僕にはそう見えたが何だか信じられず、近くの誰かに同意してもらいたかった。

P.179より引用

また、「y」です。しかも今回は小文字の。

この続けざまに残された「Y」は一体何を意味するのか。もう気になって仕方がありません。

噴火によってクローズドサークル状態となった中でのダイイングメッセージつき連続殺人。

もうこれだけで最高じゃないですか!

 

さらにさらに、読者への挑戦もあります。

つまりこの挑戦状のあと、読者と同じ条件のもと、江神二郎が犯人を指摘していきます。この華麗なる推理も大注目です。

普段は読者への挑戦を読み飛ばしてしまう、という方も「学生アリスシリーズ」の挑戦はぜひチャレンジしていただきたいですね。

江神二郎が論理的な推理をしていく最中、この物語が「いかに読者にフェアに書かれていたか」がお分かりいただけるでしょう。

頑張ってください。私は無理でした。

そして、青春である。

クローズドサークル、ダイイングメッセージ、読者への挑戦、が揃うザ・本格ミステリですが、『月光ゲーム』では主人公たちが大学生ということもあり、ここに「青春」という要素が加わります。

このおかげでガチガチの本格ミステリに柔らかさが加わり、「青春小説」としての一面も楽しめるようになっているのです。

決して爽やかとは言えないかもしれませんが、青春というものはやはり重要な要素だということが改めてわかります。

この『月光ゲーム』に限らず、「学生アリスシリーズ」はいずれも青春要素が強め。これがこのシリーズの特徴であり、私が大好きな理由の一つです。

しかもね、読後感が、これね、たまんないですよ!!ああ、もう!!!

なんですかこの胸の痛みは。もう本当に「胸に残る青春小説」を読んだときの読後感ですよ。本格ミステリを読んだときの読後感じゃない。。

『月光ゲーム』のポイント

①クローズドサークル・ダイイングメッセージ・読者への挑戦が揃った本格モノ。

②江神二郎の推理の美しさ。どんな謎も丁寧かつ論理的に解いていく様はまさに「本格推理小説」。謎解きの面白さ、というものを思いっきり味わえます。

③青春小説としても面白く読めるし、切ない。

④デビュー作ながら本当に読みやすい。

という感じですね。

ミステリー小説がお好きであれば、間違いなくおすすめする名シリーズでございます。

 

というわけで最後までありがとうございました。

次回は、「学生アリスシリーズ」の第二弾『孤島パズル (創元推理文庫)』をご紹介させていただきます。

第一弾の『月光ゲーム』を読めば絶対『孤島パズル』も読みたくなっちゃいますよ〜(* >ω<)=3

ぜひご参考にしていただければ幸いです。

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5 件のコメント

  • 月光ゲームは僕が初めて推理小説にはまった時に読んだ作品の中の一つで、とても思い入れがあります。学生アリスシリーズは、探偵役の江神さんだけでなく、モチさんや信長さんやアリスが、凡人ながら頑張るところが大好きなんです。ミステリ好きとして応援したくなっちゃうし、一緒に考えるのも楽しいんですよね。僕は挑戦状は解けませんでしたが(笑)

    • アラシナオヤさん!そう!そうなんですよ!!!!!
      モチさん、信長さん、アリスの3人の、江神さんのような天才ではない「ただのミステリ好き」が頑張るところが良いですよね!!やっぱりアラシナオヤさんもそうでしたか!いやー共感できて大変嬉しゅうございます。
      特に第三弾『双頭の悪魔』での、江神さんがいない状況でのモチ、信長、アリスの推理ディスカッションが最高に好きなんですよお!!!
      ああ、すいませんつい興奮してしまいました。。。あ、もちろん私も挑戦状は解けませんでした(゚∀゚*)

      • 共感してもらえて嬉しいです!やっぱり興奮しちゃいますね!
        双頭の悪魔では3人で頑張って真相を明らかにしようとするところの描写が濃密で、分厚くてもすいすい読めちゃうんですよね〜。江神さんの推理も好きだけど、力を合わせて謎を解くアリス達も大好きなんです。これができるのは有栖川先生ならではだと思います。

  • ミステリで最も好きなシリーズです。
    それまでクイーンをはじめロジックものは地味な印象(偏見)があり全く読んでいなかったのですが、この作品で取り憑かれちゃいました。
    ダイイングメッセージというものもそれまでは非現実的に思えあまり好印象を抱いていなかったのですが、これは抜群に面白かったです。

    学生アリスの実写化はお天道様が許さんと信じています(笑

    • おお!最も好きですか!
      いやーわかりますわかります。ロジックものの地味な感じ 笑。でもこのシリーズは特別ですよね。本当に美しいし、キャラクターが魅力的。
      私も学生アリスの実写化は、、、、(ノ∀`笑)

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    anpo39

    年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。休日は引きこもって本ばっかり読んでいるので、人との交流があまりありません。仲良くしていただけたら嬉しいです(*≧д≦)